展覧会概要
子供の頃、お気に入りの物を詰め込んだ「宝箱」を作った記憶が誰しもあるように、物を集め並べる行為は、人間の根源的な喜びに通じているようです。この展覧会の出発点となる、ノルウェーの新進作家オーシル・カンスタ・ヨンセンが描く絵本『キュッパのはくぶつかん』の主人公キュッパも、物集めが大好きな丸太の男の子です。
この展覧会は「物を見つめ、集め、並べてみることから始まる、私たちの住む世界とのコミュニケーション」がテーマです。『キュッパのはくぶつかん』のお話を導入にしながら、物を収集する過程の、そのワクワクした気持ちが伝わってくるようなコレクションや、何かを観察し、収集し、並べることを含むアーティストの作品を紹介します。
今回の展示の特徴は、自然科学系、歴史系、美術系などのカテゴリーを超えて展示物が選択されていることと、参加・体験を伴う作品が多いことです。展示室ではキュッパのように自分の周りに広がる世界をクリエイティブに観察し、誰かとまなざしを共有する楽しさを体験することができます。
この企画展は、上野公園の9つの文化施設が連携し取り組んでいる、子供たちのミュージアム・デビューを応援するラーニング・デザイン・プロジェクト「Museum Start あいうえの」の活動から発展して生まれました。
青少年、親世代、シニア世代など、多世代間のコミュニケーションが促進され、持続可能な社会の人々のつながりを支える新たなミュージアム像について、キュッパと共にゼロから想像してみる機会となることを願っています。
展覧会の見どころ
1.キュッパの部屋へようこそ
この展覧会は「丸太の男の子 キュッパ」の部屋から始まります。
まずノルウェーの新進作家オーシル・カンスタ・ヨンセンが『キュッパのはくぶつかん』の物語を映像で紹介します。
この物語に描かれた、物を集め、観察し、並べてみることを通して自分の生きる世界を把握しようとすること、
そして物を介して人々が考え、アイディアをシェアすること、について考えることに誘われます。この部屋では
キュッパのように、何かを収集し並べているアーティストや、ミュージアムのコレクションをご紹介します。
栗田宏一《SOIL LIBRARY/TOKAI》2014年
アチック・ミューゼアム・コレクション
(国立民族学博物館)
岩田とも子《粟島自然観察船‐船になった学校‐》2014年
2. みつめて、あつめて、しらべて、ならべて
キュッパの部屋でさまざまな収集されたコレクションを見たあとは、参加型の展示スペースです。
ここではキュッパのように、散歩に出かけ、物を集め、見つめ、並べることができます。
展示室に幅12メートル、高さ8メートルのヒノキ材で作られた収蔵棚が出現します。
その前に広がる床には、1000種類以上の物が分類されないまま置かれています。
それらの物をよく見つめ、集め、自分の分類を考え、箱の中に並べてみてください。
タグをつけ、誰かと一緒に物を見つめ、考えをめぐらせてみる「物を通して対話する」空間です。
日比野克彦《bigdatana—たなはもののすみか》2015年
制作協力:株式会社ムラヤマ
床に広げられた未整理の物
もの集め監修:大月ヒロ子(ミュージアム・エデュケーション・プランナー)
日比野克彦《ソコソコ想像所‐上野の杜》2015年
3. まなざしの冒険へ!
ギャラリーCの細い長い展示室には300近いイギリスの陶磁器が展示されます。
大量生産やモダンデザインに代わってイギリスの1960-70年代に注目を集めた、ろくろで成形された陶磁器です。
イギリスの作家アラン・ケイン自らが選んだものに、さらに観客が身近な場所から探し出し持ち寄った、
今は不要となった皿や陶器を足していくことで、作品が次々と膨らんでいく観客参加型インスタレーション作品です。
最後の部屋は私たちの身近にある物、知っているはずのものを、もう一度よく見て、あつめて、並べてみるという試みをして
いる作品です。普段見慣れている物であっても、物に対する眼差しを変えるとなんだかいつもと違うことが発見できます。
低い机の上におかれた石は触ることが可能です。石の観察は触覚もフル稼働させて見てください。
アラン・ケイン《Home of Orphaned Dishes 》
(忘れられた器たちの棲み家) 2011年
Courtesy British Council Collection © Alan Kane
小山田徹《浮遊博物館2015》2015年